腰痛ラボ

腰痛の悩みが和らぐ、腰痛改善を一緒に考えるラボ

【腰痛スペシャリスト】
骨格筋評論家
岡田隆氏 特別編 後編

腰痛スペシャリスト#17 岡田隆氏(骨格筋評論家)

【腰痛改善レシピ】

今回は、岡田隆先生に再度ご登場いただき、特別編としてご著書の『骨格バランス 改善メソッド』(ナツメ社)に基づき、腰の痛みや不調を改善するためのレシピを前編・後編に分けてご紹介します。同書では痛みや不調の成り立ちを知り、それに応じた対処を自分で行う「セルフ理学療法」を実践することができる画期的なアプローチが提案されています。

前編では【ぎっくり腰】の改善レシピをご紹介しました。後編では、腰痛を「骨盤の後傾に起因する腰痛」と「骨盤の前傾に起因する腰痛」の2つに大きく分け、その中から「腰痛ラボ」への問い合わせの多い4つの症状について取り上げ、それぞれの改善レシピを抜粋して紹介します。
前傾、後傾どちらもその原因は複数考えられますが『骨格バランス 改善メソッド』では、前屈しづらい”“猫背”といった一般的によく見られる具体的な症状を取り上げ、そのメカニズムの解説だけでなく、各部位に生じる骨格の異常を視覚的に理解できるようにイラストによってわかりやすく(不具合が生じた場所を把握しないと具体的にイメージできない)説明されています。そして、その改善レシピが「マッサージ」「ストレッチ」「筋トレ」に分けて紹介されています。
 
【骨盤の後傾に起因する腰痛】
*骨盤が後傾すると前にかがむ動作がしにくくなります。

❶ 前屈しづらい腰痛

<しくみ>
椅子に浅く座るなどして骨盤が後傾する

腰が丸まって腰椎が伸ばされた状態になる

腰部の筋肉・筋膜が硬くなる
太もも裏の筋肉(ハムストリング)が硬くなる

腰部の血流が悪くなる
硬くなった太もも裏の筋肉が骨盤の前屈を妨げる
お腹が出たり、猫背になることも

ハムストリング:半膜様筋(はんまくようきん)、半腱様筋(はんけんようきん)、大腿二頭筋(だいたいにとうきん)からなる太もも裏の筋肉群の総称。

[腰部のマッサージ]
血行不良で硬くなった胸腰筋膜(きょうようきんまく)とその深部にある筋肉をほぐすことで腰部の血行を促進します。

床に仰向けになって両膝を曲げ、マッサージボールを骨盤の上端付近(硬くなっていると感じる部分)に当てます。両腕は胸の前で組み、全身を脱力させてボールをしっかりと食い込ませます。
<目安>1〜3分

[太もも裏のストレッチ]
硬くなって骨盤を引っ張り後傾させる、太もも裏の筋肉(ハムストリング)を伸ばし、柔軟性を取り戻して骨盤が前傾しやすい状態にします。

① 背すじを伸ばして立ち、足を前後に開きます。前に出した脚の膝は伸ばしましょう。両手は腰に。

② 背すじと膝は伸ばしたままで上体を前に倒します。この時、脚の付け根から倒すのがポイント。また、背中を丸めないように注意。

<目安>左右各20〜30秒

バリエーション
仕事中など、椅子に座って行うこともできます。立って行う場合と同じ要領で、前に伸ばした脚の足首を曲げないこと。

[腹部の筋トレ]
前屈動作の際、一部の腰椎に過度な負荷をかけないよう脊柱を屈曲させる動きに働く腹直筋(ふくちょくきん/一般的には腹筋と呼ばれる)を鍛えます。
背中全体を丸めることができないと負担が一部に集中することに。

① 床に仰向けになり、両膝を揃えて曲げる。両腕は胸の前で組み、頭部を床から浮かせて腹直筋に力を入れます。

② 息を吐きながら、おへそを覗き込むような感じで頭から背中を丸めるように上体を起こします。腹部が床から離れないように。

③ 腹部に力を入れたまま①の状態に戻します。

<目安>10回3セット

【骨盤の前傾に起因する腰痛】
*骨盤が前傾すると腰を反らせる動きが辛くなります。

❷ 反り腰
女性に多い症例です。

<しくみ>
腹筋や太もも裏の筋肉(ハムストリング)が弱いとイスに座った状態で骨盤が前傾

腰椎の自然なカーブが損なわれ、過度に反った状態に
股関節の深部前面にある腸腰筋が腰椎と骨盤を引っ張り後傾しにくくなる

腰椎の椎間関節が圧迫され、関節組織に負担がかかる
腰部の筋肉も収縮した状態が続き緊張して硬くなる

腰部の血行が悪くなる

[骨盤後傾位マッサージ]
骨盤を後傾させた状態で、腰椎周辺の筋肉や胸腰筋膜をほぐし、腰部の血行を促進します。

床に仰向けになって両膝を曲げ、マッサージボールを腰椎と骨盤の境目付近に当てます。腹筋運動をするようにお腹に力を入れて骨盤を後傾させた状態でほぐすことが重要。
また、腰椎の中部〜上部にボールを当ててしまうと腰が反りやすくなってしまうので注意を。
<目安>1〜3分

[骨盤後傾位ストレッチ]
骨盤を後傾させて反り腰を改善します。

床に仰向けになり、両脚を曲げたら膝裏で手を組んで両膝を手前に引き寄せます。

バリエーション
両膝を抱え込んだ状態で後ろに転がり、動きを止めることなく反動で起き上がります。これをゆりかごのように何度も繰り返します。反り腰だけでなく、腹部から背中にかけての筋肉や筋膜を全体的にストレッチできます。

❸ 腰が反らせない/腰椎分離症

<しくみ>
反り腰で腰椎が過度に反る

椎間関節が圧迫され続ける

腰椎の椎弓(ついきゅう)にダメージが蓄積し、疲労骨折して骨が分離
多くの場合、第五腰椎で発症
10代ではスポーツによる負荷で発症する場合も多い

[椎間関節の除圧ストレッチ]
腰椎分離症の症状が軽くなってから行います。
反り腰の改善にもつながるストレッチ。

① 足を少し広げてまっすぐ立ちます。上体を脱力し、頭部をゆっくり前方に倒して頸椎を丸めます。頭から丸めることで腰への負担が軽減します。

② 腕を垂らすようにして頭部からゆっくり背中を丸めていきます。

③ 脱力したまま、さらに背中全体を丸めて腰が伸びるまでゆっくり前屈します。上半身の重みで骨盤が前傾。

<目安>3〜5回

[体丸めトレーニング]
腰に負担をかけず前屈を身につける筋トレです。腰椎分離症や反り腰の予防に効果的。

① 床に両脚を伸ばして座り、両腕を床について支えながら上体を少し後ろに倒します。

② 伸ばした両脚を床から浮かします。あまり高く上げておかないように。これによって腹直筋(腹筋)と腸腰筋(ちょうようきん/内臓と脊椎の間にある腰椎と大腿骨を結ぶ筋肉群の総称)に負荷をかけます。

③ 頭から上体を丸めると同時に両膝を曲げ、膝が頭に付くくらいまで引き寄せます。このとき、背中を丸めて腹直筋をしっかり縮めるのがポイント。

④ お腹に力を入れたままの状態で①に戻ります。

<目安>10回3セット

❹ 猫背
背中の丸まりのことで、その部分に痛みや不調を感じなくても、首痛や肩こり、腰痛など様々な痛みや不調につながる恐れがあるため早めのケアが大切です。

<しくみ>
パターンA
パソコンやデスクワーク等により、頭部を前に倒した状態や頭を前に突き出した姿勢に

頭部を支えている首に過度な負担がかかる

負担が背中にまで及ぶ

首への負担を減らそうとして脊柱が丸まる

猫背に

パターンB
イスに浅く座るなどして骨盤が後傾することで腰椎も後傾、頭部も後方に傾く

胸椎を丸めて頭部を前に出すことでバランスを補う

猫背に

AもBも崩れた姿勢のバランスを補うことで、結果的に猫背に。このほか、脊柱起立筋(脊柱の背側にある筋肉)の筋力不足に起因することも。

[日常生活の中でできる首のケア]

* スマホを使用するときは目線を上げる

* 上を向く

* 首を回す

* パソコンを使用するときには背筋を伸ばしてアゴを引く

* 枕を低くして眠る

 
[習慣にしたい猫背の予防につながる日常対策]

* 仕事や家事の合間に背中を反らす → 丸まった胸椎を伸ばす・脊柱起立筋を刺激・背中の血行を促す
ずっとできなくても気が付いた時に行って崩れた姿勢を一度リセットするだけでも効果があります。

* 胸を張って両ひじを後方に引いて肩甲骨を寄せる

* 骨盤を立てて正しい姿勢で座る

 
[脊柱起立筋の筋トレ]
正しい姿勢の維持に働く脊柱起立筋を鍛えます。特に、脊柱起立筋が弱い傾向がある女性にお勧め。

① 腹ばいになり、両足を揃え、万歳をするように両手を頭上に伸ばします。顔は床から浮かしておきます。

② 両手を伸ばしたまま、痛くない範囲でできるだけ胸を張って背中を反らせます。伸ばした両腕の重さが負荷に。

<目安>10回3セット

[肩甲骨寄せ背中反らし]
背中を反らせながら左右の肩甲骨を寄せることで、僧帽筋(そうぼうきん/背中の最も表層にある筋肉)や菱形筋(りょうけいきん/僧帽筋の深部にある左右の肩甲骨の内側縁に付着する一対の筋肉)を鍛えます。

① 腹ばいになり両腕をまっすぐ足の方に伸ばします。手のひらは床につけ、頭部を浮かし、両足は揃えて伸ばします。

② 肩甲骨を寄せながら背中を反らせます。手のひらを外側に返して腕を外側にひねりながら行うとよりしっかりと肩甲骨を寄せられます。
立った状態で行うよりも、腹ばいの状態で行う方が背中の動きに集中できて効果的。

<目安>10回3セット

「本書の理学療法的アプローチが、みなさんの快適な日常生活の一助となれば幸いです。」
(『骨格バランス 改善メソッド』著者のことば、より)

本書は痛みや不具合が生じたときの助けになるだけでなく、日常的に取り入れやすいメソッドが満載です。「これなら日常生活の一部として取り入れて肉体を改善・ケアしていける!」と、前向きになれるメソッド、無精者(私のような・・・)にも優しい一冊なのです。

 

岡田隆 氏 骨格筋評論家(バズーカ岡田)
日本体育大学体育学部准教授、理学療法士、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー、NSCA CSCS、JATI-AATI
1980年、愛知県生まれ。
日本体育大学大学院修了(体育科学修士)、東京大学大学院総合文化研究科博士後期課程単位取得満期退学。
専門領域はトレーニング科学、アスレティックリハビリテーション。現在はJOC強化スタッフとして柔道日本代表チームの体力強化部門長を務める。
現役ボディビルダーとしても活動中。
著書に『骨格バランス改善メソッド』(ナツメ社)、『プロが教える骨と関節のしくみ・はたらき パーフェクト事典』(ナツメ社)、
『除脂肪メソッド』(ベースボールマガジン社)、『無敵の筋トレ食』(ポプラ社)ほか多数。
公式サイト https://bazooka-okada.jp/

Return Top