腰痛ラボ

腰痛の悩みが和らぐ、腰痛改善を一緒に考えるラボ

#11 石垣英俊氏
(神楽坂ホリスティック・クーラ)

聖地巡礼#11 石垣英俊氏(神楽坂ホリスティック・クーラ)

腰痛の原因が腰にあるとは限らない。腰痛の原因は実に多様。

今回お話を伺ったのは、腰痛の改善を体系化し、それぞれに合った腰痛改善メニューを提案する『腰痛の実学』の著者であり、“背骨リラックス”をコンセプトに掲げる「神楽坂ホリスティック・クーラ®」代表である石垣英俊氏です。前編では腰痛の仕組みについて、後編では「ぎっくり腰」の原因とすぐにできるマッサージも教えていただきます。石垣氏ならではの、中医学の観点から捉える腰痛の考え方やメソッドにも注目です。

—— まず、先生が「神楽坂ホリスティック・クーラ®」のコンセプトとして掲げられている“背骨リラックス”について伺いたいと思います。これは、背骨の緊張を解放するということでしょうか。

石垣英俊さん(以下、石垣)

   はい、背骨が私たち人間にとってとても大切な骨だということはみなさんよくご存知だと思います。日々の緊張や疲れの蓄積、内臓や心の問題、さまざまな生活習慣による背骨の歪みや緊張をそのままにしておくと、疲れが取れず回復しないだけでなく、さらなる不調の原因にもなります。背骨のまわりの筋肉は知らず知らずのうちに緊張したままになっていることが多いのです。ですので“背骨リラックス”、つまり、背骨を緊張から解放して心身の状態をよくしようという取り組みです。

—— なるほど。こちらでは、ピラティスとヨガをベースにしたレッスン=アクティブケア、セラピストによる施術=パッシブケアの両方を提供されていますね。

石垣 そうなんです。施術だけではなく、自分の体を理解して、ご自身の力でも健康を目指していただくためにはアクティブケアとパッシブケアの両方が必要だと考え、提案しています。

—— 自分の体の状態を理解して、能動的に健康を目指すのは大事ですね。ご著書の『背骨の実学』、『腰痛の実学』を読ませていただきましたが、骨格や筋肉の説明がかなり細かく解説されていて、構造やそれぞれのはたらきがよくわかりました。『腰痛の実学』では、多様な腰痛の原因があげられていて、その仕組みも理解できました。「見える腰痛」と「見えない腰痛」という表現もわかりやすく、腰痛の原因として11項目があげられていますがそれらを改めてご説明いただけますか。

   ① 【腰椎】 ② 【椎間板・椎間関節】

石垣 わかりました。①と②はほぼ一緒と考えていいと思います。まず、背骨の中の腰の部分が「腰椎」です。椎骨、クッションの椎間板、その後ろの椎間関節の3つで1つのユニットが作られ、それが一本に連なった柱=脊柱が背骨です。

   椎間板に亀裂が入ったり中の髄核が脱出してしまう椎間板ヘルニア、加齢等により脊髄が通っている脊柱管が狭くなり神経を圧迫する脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)など、現代の技術ではほぼ画像検査で発見できると思います。ただ、動きにくくなってバランスが崩れた椎間関節の、故障とは言えないくらいの不具合は画面上では確認しにくく、放っておくと、後々いろいろなことに影響が出てくることもあるので要注意です。

—— ①②は医療機関で受診すべき「見える腰痛」ということですね。椎間関節は要注意ということで。次の頚椎(首)と胸椎(胸)は腰からは離れていますね。

   ③ 【頚椎・胸椎】 ④ 【骨盤】 ⑤ 【足】

石垣 確かに離れていますが、背骨はすべて連動しているということなんです。腰から離れている頚椎や胸椎に問題が生じたことで腰椎に負担がかかるというのは往往にしてあること。姿勢が悪いと、頚椎や胸椎の自然なカーブが失われて、頚椎で頭の重さを分散できずに首や肩、そして背中の筋肉が疲労し、さらに結果として腰椎の椎間板や椎間関節にも負担がかかって腰痛を引き起こします。

—— 腰が痛いからといって、必ずしも痛みの原因は腰だけではないということですね。

石垣 そうです。人が動くときは一つの関節だけが動いているわけではありません。ほかの関節も同時に動いているのです。これを運動連鎖と言います。筋肉も筋膜で繋がっていますから同じことが言えます。今は、わかりやすいように1つずつ説明していますが、それぞれに生じた不具合がいろいろなところに影響します。【骨盤】も、例えば座り方が悪いために生じた歪みを、腰椎、頚椎が補正して、正しいバランスを保とうとして結果、負担がかかってしまいますし、【足】も、左右差があったりすると、膝・股関節・仙腸関節・腰椎と伝わっていくときにそれぞれが補正しようとして次々と負担がかかり腰痛を引き起こすことに。

 

—— 内部で補正されているために外から見るとバランスが取れているように見えても、一箇所の不具合が補正の連鎖を生み、次々と負担がかかり思わぬところに痛みが出てしまうことがあるということなんですね・・・

石垣 そうですね。だから、歪みの影響が一番強く出ているところはどこなのか、そして、おおもとの原因はどこにあるかということを考えなくてはいけないんですよ。

—— それを間違うと意味がないですね。でも、補正しているところは頑張っているので、筋肉が硬くなったりしていたら不具合と間違えてしまいそうです。

石垣 はい、補正しているところは頑張っているので、筋肉が硬くなっていることもありますが、それを問題の生じている場所と間違えてバキバキやっても、あまりいいことにはなりませんね。その人にとって本当の問題はどこに起こっているのかを考えないと。

   ⑥ 【体幹】 ⑦ 【姿勢】

石垣 体幹は骨の代わりに腰部と腹部を支えている筋肉がありますのでとても大事です。腰をコルセットのように守る腹横筋、背骨の両側にあって縦に連なる脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)とその深部にある多裂筋(たれつきん)、内臓を下から支える骨盤底筋群(こつばんていきんぐん)、上部にある横隔膜。これらがちゃんと機能していれば腹圧を高めて内臓を正しい位置に保つことができ、骨盤の左右差やねじれなども補正できます。逆に筋力が弱まると、腰に負担がかかり、内臓も正しい位置に保たれなくなるということになります。

—— なるほど、腰痛の原因は腰というよりお腹にあったわけですね。【姿勢】、これはもう言わずもがなですね。

 

石垣 座っているとき、歩いているとき、立っているとき全ての姿勢が影響します。人間はどうしても楽な姿勢を取ってしまうと思うので、正しい姿勢=楽な姿勢になるのが理想的です。ですから、正しい姿勢を習慣にできる「アーユル チェアー」はいいと思います。


   ⑧ 【日常動作】

石垣 先日、ヘアサロンに行った時に担当の美容師さんと話したんですが、美容師さんはたいてい体がすごく歪んでいるとおっしゃっていました。

—— カットする時に中腰だったり、左右のクセもありますよね。職業的な日常動作となると切実ですね。

石垣 偏った姿勢で集中して仕事をしなくてはならない方は、どうしても歪みが出ますからね。歯科医師の方や調理師さん、デスクワークが多い職業もそうですね。

—— 私も座りっぱなしのことが多いのですが、自分でストレッチしたり、マッサージしたり、こまめにケアすることが大事だと実感しています。

石垣 そう思います。あとは、荷物を持ち上げる時や顔を洗う時など、悪い姿勢での動作に注意してください。普段から、胸郭や股関節の可動性を高めて、腰への負担を軽減させる動作を身につけることも大事です。

   ⑨ 【ココロ】 ⑩ 【呼吸】 ⑪ 【内臓】

—— ココロの状態というのはどのように腰痛と関わってくるのでしょうか。

石垣 メンタルストレスは【呼吸】とも密接ですし、【姿勢】にも現れます。メンタルストレスがあると呼吸補助筋という筋肉が緊張してしまって浅い呼吸になり、肩や胸の筋肉も短縮して姿勢が悪くなり、自律神経や内臓とも関わりの深い横隔膜も動きにくくなります。筋肉の緊張が高い状態が続けば、血流がうまくいかなくなり、虚血状態が続くと酸素不足になって痛みを感じやすくなります。つまり、痛みに弱くなる。

—— ええ、そんなに影響が・・・ストレスがあると腹式呼吸がうまくできないというのは聞いたことがあります。

石垣 心の持ちよう、呼吸、内臓、すべてリンクしているので、例えば内臓の働きがちゃんとしているのに気持ちが落ち込んでいる人ってあまりいませんよね。

—— 確かにそうですね。【内臓】についてもう少し詳しく教えてください。

石垣 内臓の働きに問題があると、腰の周辺の筋肉が緊張します。その状態が長く続くことで筋肉自体が痛みを発したり、力が入らなかったり、場合によっては何でもないちょっとした動きで傷ついてしまうことも。胃に問題があると胸椎のワキ、腸や泌尿器、生殖器に問題があれば腰椎や骨盤周りの筋肉が硬くなります。

—— 姿勢の悪さや体幹筋力の不足で内臓の位置がずれて不具合が生じることもあると、ご著書にありました。姿勢や筋肉と内臓は常に関わり合っているということですね。

石垣 はい、だから普段からそういうところをケアしておけば腰痛の予防にも繋がると思います。要は全部が繋がっているし、全部が同時進行だということなんですよね。

—— 本当にそうですね。すべてが同時進行というのも納得できます。最後に、遠く離れた部位でも腰痛の引き起こすこともある、トリガーポイントについて教えていただきたいのですが。

石垣 トリガー、つまり引き金になるようなポイントです。筋肉のコリのようなもので、活性化すると離れた部位に痛みが生じたり、その部位自体に痛みが出ることもあります。発生する原因としては、普段から負荷がかかっていたり、使いすぎだったり、微小断裂といって知らず知らずのうちに傷ついていたり、何かの防御反応で収縮を続けていた部位など。これにもメンタルストレスや内臓の問題も関わっていると僕は思っています。

—— それでは、痛みを感じている部位ではなく、トリガーポイントにアプローチしなくてはいけないということですね。

石垣 そうです。中途半端に間違ったポイントをマッサージしてしまうと、コリを解消できないだけでなくそこが新たなトリガーポイントになってしまう危険性もありますから要注意です。腰が痛いからといって原因が腰にあるとは限りません。腰痛の原因は実に多様です。原因として考えられる幾つかのポイントをあげてみましたが、どれか一つとは限らないのです。まずは、自分の体としっかり向き合うところから始めてください。


アクティブケアとパッシブケアの両方で背骨をリラックスさせる、チームワークも素晴らしい「神楽坂ホリスティック・クーラ®」の皆さん。
右から、石垣英俊さん、チーフセラピストの山口実可さん、セラピストでヨガインストラクターの川名祐紀さん。
 

腰痛の原因は一つとは限らない・・・まずは、腰痛の原因として考えられる事柄を体系的に解説していただいたことで、だいぶ整理できた気がします。その上で、改めて自分の生活を振り返ってみようと思います。後編では「ぎっくり腰」について、原因と即効性が期待できるツボなども教えていただきます。
 

神楽坂ホリスティック・クーラ
TEL:03-3269-8785
石垣英俊氏(CURA株式会社 代表取締役、「神楽坂ホリスティック・クーラ®」代表、>セラピストカレッジ「ナーチャ」校長)
鍼師、灸師、按摩マッサージ指圧師、オーストラリア政府公認カイロプラクティック理学士(B.C.Sc)、応用理学士(B.App.Sc)。
中国政府認可世界中医薬学会連合会認定国際中医師。全米ヨガアライアンス200h修了ヨガインストラクター。日本ヨーガ療法学会認定ヨーガ教師。
東西の智慧を独自に融合させた新メソッド「アラウンドセラピー®」を主宰。
著書に『コリと痛みの地図帳』(池田書店)『背骨の実学』(池田書店)『痛みと不調を根本から改善する 背骨の実学』(池田書店)
『背骨、骨盤、足から治す 腰痛の実学』(池田書店)ほか多数。

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