腰痛ラボ

腰痛の悩みが和らぐ、腰痛改善を一緒に考えるラボ

#4 伊藤大助氏
(洗足整形-形成外科 院長)

ヘルニアは切らない、が今の主流です。

意外なことが主流になっていることは様々な分野で起こっていること。それは腰痛治療に関しても同じ。洗足整形-形成外科の伊藤大助院長のお話を伺っているとまさに晴天の霹靂。四人に一人は腰痛持ちといわれるほどの時代に医療も、治療も様変わりしている。最新の腰痛事情を伺いながら、日常生活の腰痛改善法など、ざっくばらんに伺った。

北原徹(以下「北原」)

   先生は今もアーユル チェアーに座っていらっしゃいますね。

伊藤大助先生(以下「伊藤」)

   背筋が伸びるところが良いです。普通にしていたら人間の背筋は伸びません。 食事会などでも、最初はみんな姿勢が良くても、崩れてしまいます。

北原 それ、わかります。電車に乗っていてもそうですが、どんどんどんどん腰が曲がって、だらしなくなりますね。

伊藤 そうなんです。だから、アーユル チェアーに座って、背筋を伸ばしてもらうだけでずいぶん違います。

北原 生活習慣で姿勢を正すだけで、腰痛はかなり改善されるものですか?

伊藤 もちろんです。あとは股関節を広げるといいです。椅子に座って大きく股を開いているだけでも良いのです。痛くない程度に広げてみてください。股関節の柔軟性は体にとってとても大切なのです。

北原 お相撲さんの股割りも理にかなっていると、ずいぶん前の取材で聞いたことがあります。トレーニングということも含めて、洗足整形-形成外科にはリハビリのマシーンが充実していますね。トレーニング的には腰痛に推奨しているものはあるのですか?

伊藤 静的と動的の2つあります。ハードなものは、年配の人にはきついので、寝た状態で10センチ足を上げるだけで負担をかけないようにしたりと、筋トレは4,5人のトレーナーに任せてやっています。私が診断をつけて、治療方針が決まり、治療計画は、理学療法士が方針を決めています。

北原 なるほど。前編でお話をさせていただいた、イメージするお医者さんの腰痛治療とはずいぶん違いますね。電気治療と湿布だけでマッサージは接骨院に行くというパターンを医師の診断のもと行われるというのは革新的ですね。

伊藤 私はオプションをたくさん用意することも大事だと思っていて、機械も全種類ありますし、トレーナーもいます。それこそマッサージ師、鍼師もいて、個室でおばあさんたちがトレーニングもしていて、あらゆるオプションを用意しています。電気をあてて、湿布をして終わりという事も多かったのですが、湿布なら薬局でいいとなってしまいます。

北原 1歩、いや100歩先端にでているクリニックですね。オプションが必要だという考えはどこから? 先生の哲学みたいなものはあるんですか?

伊藤 不思議なもので、これで治りましたというのはひとつではないのです。マッサージが良い人もいれば、悪くなる人もいて、いくつかをトライさせてあげる選択肢をもっておくことが重要です。

北原 人によって効くものが違うというのは、当たり前ですよね。

伊藤 そうです。人によって合うスイッチがあると思うので、レントゲンだけでは全部が完全に診断できないこともあると思います。仙腸関節炎だったら、AKA(編集部注※AKA:仙腸関節のズレを治す治療)をやればいいという風潮がありましたが、それで治る人もいれば、治らない人もいるので、他のオプションがあってもいいのです。

北原 まさしく患者本位、病状本位というわけですね。人それぞれ個性があるように症状にも個性(?)はありますよね。

伊藤 症状も様々ですが、原因も様々なのです。腰痛の7割は精神的な問題といわれていて、色々な事があってお腹が痛くて学校に行けない人に多く出る腰痛の症状もあります。治りたくない人もいますし、精神的な要因で、ストレスが腰痛に出ている人はかなり多いのです。

北原 5月に腰痛が多いという話を聞きましたが、同じことですね。

伊藤 うつ病まではいかないものの、精神科的な薬も整形でも使えるようになってきました。サインバルタという薬です。オプションのひとつとしても用意しています。病は気からではないけれど、気持ちの治療も必要な時代になりました。そういう人が相当数隠れているケースがあるのです。

北原 原因も複雑化しているんですね。現代的ですよね。腰痛は現代病でもあるんでしょうね。

伊藤 まさしくその通りで、ダブルリージョンやトリプルリージョンといって、いくつも原因のあるうちのひとつという事があるのです。必ずしも腰痛と原因が1対1ではないのです。ヘルニア→腰痛のように、1対1の原因ならわかりやすいですが、精神的+年齢的+運動不足、といった影響が混ざり合っていて、現象としては「腰痛」ひとつかもしれませんが、なかなか1対1じゃないことも多いので、痛いから揉んでればいいという問題ではないのです。 まずはクリニックに行って病状を診断してもらい、マッサージに行くのはそれからです。もちろん、両方に行っても良いわけです。

北原 どこに原因があるかもわからずにただ揉んでもらって気持ち良かった、
というのは癒しにしか過ぎないかもしれないですよね。長引いている原因が癒されているだけで、余計に長引いいているかもしれない!

伊藤 マッサージ=癒しとしてとらえる。実はマッサージは治療ではないのです。治療といえば、最近新しい医療の認可を取りました。PRPという治療法です。血液を採取して、血小板を濃縮して患部に打ち込むというものです。病院は何件かありますが、都内のクリニックで認可を取ったのは初めてです。腱鞘炎とか、野球肘、ゴルフ肘はステロイドを打つことが多いのですが、ステロイドは副作用があって何回も打てないのです。

北原 ステロイドなんですね。初めて知りました。

伊藤 腱が切れたり、腱がもろくなる、皮膚が萎縮すると骨が出る、ということもあります。また、子どもには打てないものなので野球を休ませなければならなくなります。

北原 強い薬なんですね。

伊藤 ですが、PRPは、大リーグでは普及している注射です。自分の血液を濃縮して打ち込むので、副作用は考えにくいのです。感染や操作の過程で菌がはいらないような道具、空間がそろっていることが認められて6月からスタートすることができることになりました。

北原 おお! それは心強い。

伊藤 腱鞘炎だけでなく、腰痛で筋膜炎なんかだと治療として使えると思っています。どれくらいの効果があるかは論文だけでしか知ることができないので、どれくらいの効果があるかを期待したいです。

北原 医療の日進月歩を感じさせてくれる治療法ですね。自分の細胞が自分を修復していくというのはとても素晴らしいものだと思います。

伊藤 日進月歩でいうなら、10年前に、ヘルニアを手術してもしなくても5年後の成績は同じと証明されました。ヘルニア=手術だったが、昨今ではヘルニアは放置しておけば勝手に治ることがわかってきているのです。勝手に消滅することがわかっているので、劇的に手術が減りました。

北原 ぎょっへ〜〜〜〜! 目からウロコ。ヘルニアは手術以外はないと思っていました。

伊藤 いいえ、ヘルニアは治る病気なので、放置して治る人もいれば、いろいろ手だてをしても結果的に手術になる人もいます。手術をしても5年後に脚が痛いなど痛みが出たり、何もしなくても腰痛があったりと、成績が一緒という結果でした。それなら、やってもやらなくても結果が一緒なら手術をしなくても良いのではと思いますが、痛くて会社に行けないという人もいて、止むを得ない人だけ手術をする方針になり、手術をする率は10%以下に減ったのです。

北原 10%以下とは。本当に医療はどんどん進んでいるんですね。

腰痛とお医者さんがなかなか結びつかなかったのだが、伊藤先生のお話を伺っていて、腰痛をきちんと病気だと捉えることで、改善することができるのだなぁ、と。そして、何より、マッサージは悪くないとは思うけれど、先生のおっしゃる通りで旧態依然としたものだ。医学の進歩に期待して、新しい改善策を取ることも腰痛持ちにとって大事なことだといえるお話だった。

Toru Kitahara (Portrait Photographs & text) , Youtsu Lab staff(Exercise and more photographs)

洗足整形-形成外科
TEL:03-5704-7733
伊藤大助氏(洗足整形-形成外科 院長)
整形外科、形成、美容皮膚科を併設。伊藤院長を中心として、最新リハビリ機器と理学療法士、スポーツトレーナー、鍼灸師、柔道整復師
などの専門スタッフが連携をとり合いながら、悩みに応じたハイレベルな治療を提供。
伊藤院長の診断を受けたい方はお電話でお問い合わせを。

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